こぐま座のα星は現在、北極星と呼ばれています。
しかし遠い未来、別の星が北極星になることは知っていますか。
地球の自転による歳差運動のため、北極星の位置は移り変わっていくのです。
目次
1. 古代エジプト人が見ていた北極星
まず、北極星の定義は何でしょうか。
北極星とは、地球の地軸の延長線上にある星のことです。
そのため、北極星はほとんど動くことがなく、北極星を中心にして星々が回転しているように見えます。
昔から北極星は、航海の際の目印になるなど、重要な星とされてきました。
しかし、現在のこぐま座が北極星となったのは、西暦1500年頃以降です。
紀元前3000年頃、人類が天体観測を始めた当初には、地球の地軸はりゅう座の方向を指していました。
古代エジプトでは、りゅう座のα星『トゥバン』が北極星であると知られていました。
ギザのクフ王の大ピラミッドには、北向きに小さな通路(シャフト)が設けられており、このシャフトがトゥバンを指すように作られていました。
古代エジプトの人々が見た夜空は、現在とは異なっていたのです。
2. 歳差運動とは何か
なぜ、地球の地軸の方向が変わるのでしょうか。
地球は地軸を中心に自転していますが、地軸は黄道面(地球の公転軌道が作る面)に対して傾いています。
図1に示すように、地球の地軸は約23.4°の傾きを持っています。
この角度を保ったまま、地球の地軸は円を描くように動いています。
ちょうど、コマを回したときに、コマの軸が首振り運動するのと同じです。
この首振り運動のことを「歳差運動」といいます。
図1. 歳差運動のイメージ図
地球の歳差運動は非常にゆっくりとしていて、約2万5920年ごとに、地軸の先端が元の位置に戻ってきます。
1年間に動く角度は約50秒(1秒=3600分の1度)とゆっくりなので、1人の人間が、一生のうちに北極星の変化に気づくことはないでしょう。
3. 1万3000年後には季節が逆転する
1万3000年後の未来には、地球の地軸は、現在とまったく逆の方向を指すことになります。
この頃には、こと座のα星『ベガ』が北極星になると予想されています。
さらに、地軸の向きが逆になるということは、季節が逆転することを示しています。
現在の8月は、北半球では夏、南半球では冬です。
一方、1万3000年後の8月は、北半球では冬、南半球では夏になるわけです。
それぞれの季節に見える星座の方向も変わり、現在は見えている星座が見えなくなるかもしれません。
4. まとめ
人類が記録を残した5000年ほどの間に、地球の地軸の方向は、りゅう座からこぐま座に移動しました。
現在はほとんど静止しているように見えるこぐま座α星は、今後少しずつずれていくでしょう。
そうして、新たに別の星が、北極星として指名される日が来るのです。