ギリシャ神話は、多くの星座の由来になっていることから、日本でも広く知られています。
有名なのは、最高神ゼウスを中心とするオリュンポス神族にまつわる物語です。
この記事では、ゼウスより前の世代の神々による創世神話と、ゼウスが支配者となるに至った経緯について紹介します。
目次
1. ギリシャ神話が生まれた時代
ギリシャ神話は、紀元前15世紀頃には原型が作られていたと考えられています。
紀元前2000年頃から、ギリシャ周辺にはエーゲ文明が栄えました。
エーゲ文明とは、クレタ島で栄えたミノア文明、ペロポネソス半島で栄えたミケーネ文明、トルコ北西で栄えたトロイア文明などの総称です。
ギリシャ神話は吟遊詩人によって口頭で伝えられ、少しずつ現在の形になっていきました。
紀元前8世紀には、ギリシャを代表する叙事詩『イリアス』『オデュッセイア』がホメロスによってまとめられました。
その後は都市国家(ポリス)が成立し、アテナイやスパルタといった都市が栄えました。
ギリシャの都市は、やがてローマ帝国に取って代わられましたが、ギリシャ神話はローマ帝国に受け継がれていきました。
2. 旧世代の神々による創世神話
原初の混沌の中に、大地の女神ガイアがありました。
ガイアは単独で、天空の神ウラノス、海の神ポントス、山々の神ウレアを生みました。
さらにガイアは子供たちと交わり、多くの神々を生み出しました。
ウラノスとの間に生まれたのは、1つ目巨人キュプロクス(息子3人)、50の頭と100の腕を持つ巨人ヘカトンケイル(息子3人)、そしてティタン神族とよばれる神々(男神6柱、女神6柱)です。
ティタン神族は、ゼウスを中心とするオリュンポス神族の前の世代にあたる神です。
ティタン神族の6男神と6女神は、それぞれ兄弟姉妹と結婚しました。
ティタン神族の長兄オケアノスと妹テテュスは、世界中の大洋・河川の父母となりました。
河川の神々と、3000人に及ぶ娘たち(水の精霊オケアニデス)は、全員がこの夫婦の子供たちです。
同じくティタン神族のヒュペリオンとテイアの夫婦には、曙のエオス(女神)、太陽のヘリオス(男神)、月のセレネ(女神)が生まれました。
曙のエオスは、星の神アストライオスと最初の結婚をしました。
この夫婦の子供には、北風ボレアス、南風ノトス、東風エウロス、西風ゼピュロスの4兄弟と、星々がいます。
毎朝、曙のエオスが2頭立ての戦車を駆って、大空を走ります。
その後ろから、太陽のヘリオスが4頭の馬に引かせた馬車に乗って現れます。
ヘリオスは大洋オケアノスの東から出発し、オケアノスの西に沈みます。
そして、夜のうちに黄金の盃に乗ってオケアノスの流れを渡り、東に戻ってきます。
3. オリュンポス神族の誕生
3-1. ゼウス誕生のお話
ここから、ギリシャ神話の最高神ゼウスにつながる話を見ていきます。
天空の神ウラノスは、母であり妻でもあるガイアとの間にできた子供たちが疎ましくなり、冥府タルタロスに幽閉してしまいました。
これに怒ったガイアは、ウラノスに報復するよう、子供たちに呼びかけました。
ガイアの呼びかけに応じたのは、ティタン神族の末弟クロノスでした。
クロノスは兄弟を救出し、父ウラノスの権力を奪って世界の支配者となりました。
ところが支配者となったクロノスは、兄弟のうちキュプロクスとヘカトンケイルを、再び冥府タルタロスに追いやりました。
また、姉のレイアと結婚しましたが、「自分の子に王位を奪われる」という予言を恐れ、生まれた子供たちを次々と飲み込んでしまいました。
怒ったレイアは、姪のメティス(オケアノスとテテュスの子)に助けを求めました。
叡智の神であるメティスは、祖母ガイアに相談し、クロノスに子供たちを吐き出させるための薬を作りました。
レイアは、末子であるゼウスが生まれたとき、クロノスを騙して石を飲み込ませました。
そして、ゼウスをクレタ島でこっそりと育てました。
成長したゼウスは父クロノスに挑み、兄弟姉妹を吐き出させることに成功しました。
ゼウスと、父母を同じくする兄弟姉妹のことをオリュンポス神族といいます。
オリュンポス神族と、クロノスに味方するティタン神族との戦い「ティタノマキア」は、10年に渡って続きました。
クロノスに冷遇されたキュプロクスとヘカトンケイルも、やがてゼウスに味方しました。
そして、ゼウスはとうとう勝利し、クロノスたちを冥府タルタロスに幽閉しました。
ここでガイアが怒り出し、冥府タルタロスと交わって生まれた怪物テュポンを差し向けました。
怪物テュポンの恐ろしさに神々は逃げまどいましたが、ゼウスは果敢に立ち向かい、この怪物の上にシチリア島のエトナ山を投げ落として倒しました。
このため、エトナ山は今でも噴煙を上げているのだといいます。
3-2. 最高神となったゼウス
戦いに勝利したことで、ゼウスが世界の支配者となり、オリュンポス神族の時代が幕を開けました。
一方、旧世代の神であったティタン神族の力は衰えていきました。
ゼウスに味方したキュプロクスはエトナ山の地下に住み、鍛冶の神ヘパイストスと一緒に、神々の武器を作る鍛冶師になりました。
同じくヘカトンケイルは、幽閉されたクロノスたちを見張る牢番となりました。
支配者となったゼウスは、兄弟姉妹を助けてくれた叡智の神メティスと、最初の結婚をしました。
ところが、不吉な予言がもたらされます。
「メティスとの間に生まれた子は、父の勇敢さと母の聡明さを受け継ぐだろう。」
「もし息子だった場合は、ゼウスから王位を奪い取るだろう。」
恐れをなしたゼウスは、懐妊した妻メティスを飲み込んでしまいました。
メティスを飲み込んで以降、ゼウスは激しい頭痛に襲われるようになりました。
やがてゼウスの頭を割って、女神アテナが生まれました。
アテナは生まれたときから武装した状態だったといわれています。
知恵と技術を与え、さらには軍事まで司る、恐るべき女神が誕生したのです。
こうして、予言は成就されました。
アテナはギリシャで広く信仰されました。
アテナが争いで獲得した土地はアテナイ(現在のアテネ)と呼ばれ、彼女の息子が王となりました。