新月の願い事とコンバストについての考察

新月の願い事というポピュラーなおまじないがあります。

太陽と月のタイトなコンジャンクション(0°のアスペクト)を狙ったおまじないです。

一方で、太陽に近づいた惑星はコンバスト(燃焼)して、その性質を損なうという考え方があります。

新月の願い事とコンバストの矛盾について考察してみます。

目次

1. 新月の願い事

  1-1. 願い事をする方法

  1-2. アスペクトから見た解釈

2. 新月の願い事と、コンバストとの矛盾

  2-1. コンバストとは?

  2-2. 両者の矛盾についての考察

3. まとめ

1. 新月の願い事

1-1. 願い事をする方法

新月の願い事とは、新月の日に、叶えたい願い事を紙に書き出すという、おまじないの方法です。

アメリカの占星術師ジャン・スピラー氏の本が発売されて以降、日本でもポピュラーになりました。

その方法は以下の通りです。

● 新月になってから8時間以内に願い事を書く。

● 2個以上、10個以下の願い事をする。

● 願い事は手書きする。

新月の8時間後までに願い事ができなかった場合、多少効果が劣るものの、48時間後までならば願い事をしてよいとされています。

また、新月になる前にフライングで願い事をしても、その効果は薄いといわれます。

願い事を書いた紙は、「捨てる」「保管する」「繰り返し読む」といった様々な処理方法があり、特に決まってはいないようです。

1-2. アスペクトから見た解釈

アスペクトの観点で見ると、新月は「太陽と月がコンジャンクション(0°)」の位置関係です。

「自我」の太陽と「感情」の月が強調し合い、思ったことを素直に表現することに適した時期といえます。

太陽と月がタイトにコンジャンクションしているほど、その影響は強くなります。

8時間以内という願い事の制約は、アスペクトのオーブ(許容度)を根拠にしていると思われます。

一方、満月は「太陽と月がオポジション(180°)」の位置関係です。

太陽と月が拮抗し、緊張関係にあります。

意志と感情の間に葛藤が生じやすく、自分の求めるものを表に出すには適さない時期です。

願い事をするのに新月を選び、満月を避けることは、西洋占星術的に見て理に適っていると思います。

私見ですが、新月の願い事とは自分と向き合い、本当に望むことをはっきりとさせる意味があると感じます。

コンジャンクションした太陽と月は、「緊張」「困難」のハードアスペクト、「調和」「幸運」のソフトアスペクトを経由して、約29.5日でコンジャンクションに戻ります。

このとき、前回のコンジャンクション時の願いが叶っていれば喜びを感じます。

まだ願いが叶っていない場合は、さらなる努力が促され、次回のコンジャンクションまでの目標が設定されます。

新月の願い事は、神頼み的なおまじないではなく、アスペクトを利用した自己研鑽のためのアプローチと考えるべきでしょう。

2. 新月の願い事と、コンバストとの矛盾

2-1. コンバストとは?

ホロスコープ上における、太陽とのタイトなコンジャンクションを「コンバスト(燃焼)」といいます。

太陽に近づいた惑星は、太陽の熱に焼き尽くされ、その性質を損なうとみなします。

コンバストする惑星によって異なるようですが、太陽から±10°程度の範囲が該当します。

これはコンジャンクションのオーブ(許容度)より広く、太陽とのコンジャンクションは全てコンバストということになってしまいます。

2-2. 両者の矛盾についての考察

ここで、新月の願い事との矛盾が生じます。

太陽と月のコンジャンクションのとき、この月はコンバストです。

すなわち、「感情」の月が損なわれた状態といえます。

新月から8時間以内という、タイトなタイミングを狙うことも、コンバストとは辻褄が合いません。

コンバストでは、太陽との距離が近いほど、燃焼の影響が強くなるからです。

新月の願い事と、コンバストの考え方が相容れないことがわかります。

ただし、新月の前に願い事をしても効果が無い点については、コンバストと共通する部分がある気がします。

惑星が太陽に近づいていく(アプローチする)場合、太陽からの影響はこれから増し、燃焼がひどくなっていく状態です。

一方、惑星が太陽から離れていく(セパレートする)場合は、太陽の影響下から脱し、回復に向かう状態です。

新月の願い事も、新月の前は悪く、新月の後が良いという、太陽を挟んで時間的に非対称になっていることが興味深いです。

新月の願い事とコンバストの矛盾をどう考えるべきでしょうか?

最近では西洋占星術でもコンバストが使われていますが、元はインド占星術から流入したものと思われます。

自己のアイデンティティを重視する西洋に対し、インドでは「自我」の太陽を凶星と位置付けます。

インドには現在まで、カーストという厳格な身分制度が残っています。

人口の3分の2程度がシュードラと呼ばれる奴隷階級です。

シュードラは上から4番目のヴァルナ(身分)であり、カーストの最下層に位置します。

彼らは上位の3つのヴァルナに仕えることを定められた、労働者階級です。

インドには、かつてインダス文明を築いたとされるドラヴィダ人が住んでいました。

紀元前1500年頃、アーリア人がインドに進出し、カーストを作りました。

このとき、先住民だったドラヴィダ人をシュードラとして隷属させた歴史があります。

支配階級が存在する社会では、自己主張が必ずしも良い結果をもたらしません。

太陽とのコンジャンクションは、その人の個性を強めたり、自己実現に向けての活発な行動を起こす力となります。

インド社会においては、このような影響はむしろ危険なことになるため、コンバストという考え方が生まれたのではないかと思います。

結局のところ、コンバストを気にするかどうかは、文化的な捉え方の問題といえるでしょう。

自分の性格や価値観に対して、どちらを選ぶかはその人次第です。

どちらかが間違いではなく、その人にとってふさわしい解釈かどうかが重要でしょう。

新月の願い事(新月から8時間以内に行う)を信じるのなら、コンバストを気にするのはナンセンスです。

もしコンバストを重視するのなら、新月直後には願い事をしない方が良さそうですね。

3. まとめ

新月の願い事は西洋的な考え方であり、コンバストはインド的な考え方です。

矛盾しているように感じますが、「自己」というものをポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかの違いです。

日本においては、どちらの考え方でも、自分に合う方を選べば良いと思います。